オホーツク海のクリオネと仲間たち
クリオネは軟体動物の巻貝類に属し、翼のような足を持つので翼足類とよばれています。
この翼足類には生体が殻を持つ有殻類と殻のない無殻類に分かれます。
オホーツク海には以下の翼足類4種が生息しています。
有殻類 → リマキナヘリシナ・ウキヅノガイ
無殻類 → クリオネリマキナ・ペドクリオネ
クリオネは古くから知られており、イギリスのフィリップス船長が1773年に英国王を
乗せたグリーンランド海域への鯨の観察を目的とした航海において発見し、
翌1774年に発刊された報告書の中でクリオネリマキナとリマキナヘリシナの2種を
記載しました。
クリオネは北極・南極の周辺海域の冷水域に分布する両極分布種です。
その分布は寒冷水域の外洋域の表層200m以浅です。
体サイズは成体で0.5〜8.0cmの範囲で、北極域の大型個体は7.0〜8.0cm、
英国海域では0.3〜1.0cmですが、オホーツク海の個体群は0.5〜3.0cmと
ちょうど中間サイズです。世界の海洋において報告されているクリオネ科は16種で
そのうちクリオネ亜科に属する種が8種です。
クリオネの運動
クリオネ成体の運動は発達した翼足を用いて、小舟のかいで漕ぐような動作です。
上昇は翼足を上下に動かすことで、下降は腹側の下方から上方への動きによります。
本種でのみ見られる現象として、翼足の動きを止めた時には逆立ち状態となり沈降します。
普段はゆっくりと翼足を動かしていますが、餌をとるときや環境が変わったときは活発に動かします。
クリオネの捕食行動
クリオネは殻を持つ翼足類のみ捕食することが知られています。
捕食方法は獰猛で決して妖精や天使のイメージを想像することができません。
頭部にある一対のアンテナの間が開き、普段は体内に納まっている3対6本の開口円錐を伸ばして
餌のリマキナを捕捉し一対のフック(歯)を用いて、リマキナの軟体部だけを取り込みます。
餌を捕らえて食べ終えるのに要する時間が平均20〜30分です。
クリオネの生殖
クリオネは雌雄同体ですが、成熟すると卵巣が発達した個体精巣が発達した個体とが交尾します。
交尾の際は、お互い頭部を上にして腹側をくっつけます。交尾中はゆっくりと翼足を動かしており、
なかには交尾中も餌のリマキナを食べている個体が観察されています。
交尾終了後4時間で受精がおこなわれ、雌は生殖孔からゼリー質の卵塊を海中に放出します。
その卵塊は表層を浮遊します。クリオネの産卵盛期はバンクーバー沖では植物プランクトンの
増殖期である春にみられます。オホーツク海では晩秋(11月)から初夏(5月下旬)に産卵期があります。
産卵数は、小型群(体長1cm)で約150〜200個、大型群(4〜8cm)で約1200〜2800個と報告されています。
クリオネを中心とした食物連鎖
亜寒帯海域(オホーツク海、北太平洋、ベーリング海等)における食物連鎖についてクリオネを中心にみると、
下記のようになります。このようにクリオネは亜寒帯海域における生態系において重要な役割を果たしています。
植物プランクトン → リマキナ属(有殻翼足類) → クリオネ(無殻翼足類) →
↓
海鳥、アザラシ(捕食する魚を通して) ← クジラ(ヒゲクジラ類) ← 魚類(サケ・マス類、ニシン等)
クリオネについてのQ&A
その時に沖の流氷下の海水を岸まで引っ張り込む事で波打ち際でもクリオネを見ることができるようになります。
属名はクリオネは海の女神、種名のリマキナはナメクジとかナメクジの形という意味で、ナメクジのような海の女神という意味です。
なります。人間も欧米人種とアジア人種では骨格などの体格の大きさがことなるように、クリオネも地域によってサイズが異なります。
見えることから流氷の天使や妖精などと呼ばれています。
食べる餌は限られており、同じ仲間で殻を持つリマキナ(ミジンウキマイマイ)しか食べません。
6本出して、餌のリマキナを捕捉し、一対のフック(歯)でリマキナの軟体部を食べてしまい最後に殻を捨てます。
トリビアの泉というテレビ番組で取り上げられ、悪魔のような食べ方とも言われ話題になりました。
巻貝の幼生と同じ形態なので巻貝の仲間となります。
自然の海ではクリオネの一生がどのくらいの期間であるかは未解決のままです。
またヒゲクジラ類もクリオネを食べており、その他アザラシや海鳥も捕食する魚を通じてクリオネを食べています。
雄と雌の生殖孔に精子の入ったカプセルを取り付ける。その後、雌は全体がゼラチン質で覆われた卵の塊を海水中に産卵します。